企業では、売上、顧客情報、在庫、ウェブサイトのアクセスなど、日々さまざまなデータが蓄積されています。これらを事業改善につなげるには、データを整理して傾向や課題を読み取り、意思決定や施策に活かすデータ分析が重要です。
データ分析には、Excelなどの表計算ソフトを使った集計から、AIを活用した高度な分析まで幅広い方法があります。
この記事では、データ分析の基本やメリット、分析の手順やレベル、代表的な手法、役立つツールをわかりやすく解説します。

データ分析とは
データ分析とは、収集したデータを整理し、そこから傾向や課題を明らかにすることです。データ分析によって得られた結果を解釈することで、意思決定や業務改善に活用できます。
日常業務を通じて企業に蓄積される多様なデータを分析することで、売上が伸びている商品の特徴や顧客の購買傾向、各種施策の効果などを把握できます。

データ分析を行うメリット
意思決定の精度を高められる
データ分析を活用すると、売上や顧客の行動、施策の成果などを客観的に把握でき、経験や感覚だけに頼らないデータドリブンな意思決定(DDDM)が可能になります。たとえば、商品の売上推移や購入者の傾向を分析すれば、重点的に仕入れる商品や販促の対象となる顧客層を検討する材料になります。
コスト削減や業務改善につながる
業務に関するデータを分析することで、不要なコストや非効率な業務を見つけ、業務効率化につなげられます。たとえば、販売数と在庫数から仕入れ量を調整したり、広告や販促施策の成果を比較して、より効果が期待できる施策に予算を配分したりできます。
顧客理解やマーケティング改善に役立つ
購入履歴やウェブサイト上の行動を分析すると、顧客の関心や購買傾向を把握できます。顧客層に合わせた商品提案やキャンペーンを実施し、施策後のデータから成果を確認して、マーケティングを継続的に改善できます。

データ分析の5つの手順
1. 目的を明確にする
まず、データ分析で何を明らかにしたいのかを決めます。
「売上が落ちている原因を知りたい」「リピーターの特徴を把握したい」「広告施策の効果を比較したい」など、目的を具体的にすると、必要なデータや分析方法を選びやすくなります。
2. 必要なデータを収集する
分析の目的に合わせて、必要なデータを集めます。
EC事業では、売上データ、注文履歴、顧客情報、在庫データ、ウェブサイトのアクセスデータなどを分析に利用できます。アンケートや顧客レビュー、問い合わせ内容なども顧客のニーズや行動を理解するためのデータになります。
3. データを前処理する
収集したデータには、欠損や重複、表記の違いなどが含まれることがあります。そのまま分析すると結果に影響するため、分析前にデータを整理します。
たとえば、重複データの削除、欠けている値の確認、日付や商品名の表記統一などを行います。複数のシステムから集めたデータを使う場合は、項目や形式をそろえることも必要です。
4. データを分析し可視化する
前処理したデータを、目的に合った手法で分析します。
売上の推移は時系列で比較し、顧客ごとの違いは属性や購入傾向ごとに分類します。結果をグラフや表にして可視化すると、傾向や変化を把握しやすくなります。
5. 分析結果を解釈する
分析結果から何がわかるのかを整理し、施策や意思決定につなげます。
たとえば、特定の商品でリピート購入が多ければ、関連商品の提案や再購入を促す施策を検討できます。分析に使ったデータの範囲や条件も確認しながら、次の行動を決めることが重要です。

定性データと定量データの違い
データ分析で扱うデータは、大きく定量データと定性データに分けられます。両者にはそれぞれ異なる特徴があるため、分析の目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりすることが重要です。
定量データ
定量データは、数値として測定および集計できるデータです。売上の増減や施策の成果、顧客行動の変化などを把握するのに適しています。たとえば、次のようなデータがあります。
- 売上高
- 注文数
- 購入率
- 平均注文額
- ウェブサイトのアクセス数
定性データ
定性データは、数値では表しにくい種類や属性、意見、感想などを表すデータです。たとえば、次のようなデータがあります。
- 商品カテゴリー
- アンケートの自由回答
- 顧客レビュー
- インタビュー内容
- 問い合わせ内容
- 顧客の居住地や職業などの属性データ
たとえば、定量データから「商品の購入率が下がった」ことがわかっても、その理由までは判断できないことがあります。顧客レビューやアンケートなどの定性データをあわせて分析することで、購入をためらった理由や改善すべき点をより具体的に把握できます。

データ分析の4つのレベル
データ分析は、現在の状況把握から原因の特定、将来の予測、次に取るべき行動の検討へと段階的に深めていくことができます。主に、次の4つのレベルに整理されます。
1. 記述的分析:何が起きたか
記述的分析は、過去や現在のデータを集計し、「何が起きたか」を把握するための分析です。
たとえばECサイトでは、売上高や注文数、購入率、アクセス数などを期間ごとに比較し、「売上が前月より減った」「特定の商品カテゴリーの販売数が伸びた」といった事実を確認します。商品別や顧客層別に分けて、どこに特徴的な変化があるかを確認することもあります。
2. 診断的分析:なぜ起きたか
診断的分析は、記述的分析で確認した変化について、「なぜ起きたか」を調べる分析です。
たとえば、ECサイトの売上が減少した場合、アクセス数や購入率、平均注文額などを確認します。アクセス数が変わっていないのに購入率が低下していれば、商品ページや価格、購入までの導線などに原因がないか、さらにデータを分けて確認します。
3. 予測的分析:今後どうなりそうか
予測的分析は、過去や現在のデータから傾向を見つけ、「今後どうなりそうか」を予測する分析です。
たとえば、過去の販売実績や季節ごとの需要から今後の売上や販売数を見込んだり、購入履歴などをもとに、再購入や離脱の可能性を見積もる顧客予測にも活用できます。ほかにも、需要予測、在庫管理、販売計画などの判断材料になります。
4. 処方的分析:次に何をすべきか
処方的分析は、これまでの分析や予測をもとに、複数の選択肢を比較しながら、「次に何をすべきか」を検討する分析です。たとえば、商品の需要が増えると予測された場合に、欠品や過剰在庫を防ぐための仕入れ量を検討します。広告予算の配分や、顧客に提案する商品を決める際にも活用できます。

データ分析の主な手法
クロス集計
クロス集計とは、2つ以上の項目を組み合わせて集計し、属性や条件ごとの違いを比較する手法です。単純な集計だけでは見えにくい傾向を把握するのに適しています。
たとえば、購入者の年代と商品カテゴリーを組み合わせて集計すると、「20代では商品Aの購入割合が高い」「40代では商品Bが多い」といった違いを確認できます。ほかにも、流入経路と購入率、地域と平均注文額、会員区分とリピート購入率などを組み合わせて比較できます。
クロス集計は、顧客層ごとの特徴を把握したり、マーケティング施策の成果を比較したりする際に有効な手法です。ただし、項目同士に関連性が見られても、一方がもう一方の原因とは限らないため、必要に応じてほかの分析と組み合わせます。
回帰分析
回帰分析は、ある結果と、それに影響すると考えられる要因との関係を数値で明らかにする手法です。要因が変化したときに、結果がどのように変化するかを調べます。
たとえば、広告費用と売上の関係を分析すると、広告費用の増減に伴って売上がどの程度変化するかを確認できます。ほかにも、価格と販売数、アクセス数と注文数など、結果と要因の関係を調べるだけでなく、過去のデータをもとに売上や需要などを予測する際にも活用されます。
ただし、データ同士に関係が見られても、必ずしもそこに因果関係があるとは限らない点には注意が必要です。
クラスター分析
クラスター分析は、複数の特徴をもとに、似たデータをいくつかのグループに分ける手法です。あらかじめ「この顧客はこのグループ」と定義せず、データの類似性に基づいてグループを作ります。
たとえば、購入頻度、平均注文額、購入商品のカテゴリーを使って分析すると、「頻繁に高額商品を購入する顧客」「購入頻度は低いが一度に多く購入する顧客」「特定の商品カテゴリーを中心に購入する顧客」などに分類できます。
こうして抽出したグループごとに、商品提案やキャンペーン、メール配信などを変えることで、顧客の特徴に合わせたマーケティング施策を検討できます。顧客以外にも、商品や店舗などの分類にも活用できます。
ABC分析
ABC分析は、売上高や利益、販売数などを基準に対象を並べ、重要度に応じてA、B、Cの3つに分類する手法です。限られた予算や人員をどこに優先して配分するかを考える際に役立ちます。
たとえば、商品を売上高の大きい順に並べ、売上への貢献度が高い商品をA、中程度をB、低い商品をCに分類します。Aの商品は欠品を防ぐため在庫を重点的に管理し、Cの商品は品ぞろえを見直すなど、グループごとに対応を変えることができます。
商品だけでなく、顧客や取引先などを売上や利益への貢献度で分類することもできます。どの商品を重点的に仕入れるか、どの顧客を優先してフォローするかなど、優先順位を決めたい場合に適しています。
バスケット分析
バスケット分析は、注文データを分析し、一緒に購入されることが多い商品の組み合わせを見つける手法です。「この商品を購入する人は、ほかに何を購入しているか」を調べます。
たとえば、コーヒー豆とフィルターが同じ注文で購入される割合が高ければ、商品ページに関連商品として表示したり、セット商品を作ったりする施策を検討できます。
単に同時購入数が多いかを見るだけでなく、「商品Aを購入した人が商品Bも購入する割合」などを確認することで、商品の関連性を詳しく分析できます。ECサイトでは、商品のレコメンド、クロスセル、セット販売、商品配置の改善などに活用できます。

データ分析に役立つツール
表計算ソフト
ECサイトや各種ツールからCSVファイルでデータを書き出し、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトで整理、分析することができます。関数を使った計算のほか、ピボットテーブルを使って商品別や月別、顧客属性別などにデータを集計することも可能です。
売上の集計やクロス集計など、比較的規模の小さいデータを分析したい場合は、表計算ソフトから始めると取り組みやすいでしょう。
GA4
Google Analytics 4(GA4)を使うと、ウェブサイトやアプリを訪れたユーザー数や流入経路、閲覧したページ、購入などの行動を確認できます。
どの流入経路からのユーザーが購入につながりやすいか、商品ページから購入までのどこで離脱しているかといったECサイト分析に役立ちます。
Shopifyのストア分析
Shopifyでは、管理画面のストア分析から、売上や注文、顧客、セッションなどのデータを確認できます。商品、販売時期、販売チャネルなどの条件でデータを絞り込み、売上の推移や売れている商品、顧客の購買状況などを分析できます。
ShopifyでECサイトを運営している場合は、まずストア分析で販売状況を把握し、さらに詳しい分析が必要な場合にほかのツールと組み合わせるとよいでしょう。
データ可視化ツール
Tableau(タブロー)やPower BI(パワービーアイ)などのデータ可視化ツールを使うと、複数のデータをグラフやダッシュボードにまとめ、傾向や変化を視覚的に確認できます。
たとえば、Shopifyの売上データと、広告や顧客管理などのデータを組み合わせ、売上や購入率、広告効果などを一つの画面で把握することもできます。大量のデータを継続的にモニタリングしたい場合や、分析結果を社内でわかりやすく共有したい場合に役立ちます。
高度なデータ分析ツール
大量のデータを処理したり、より複雑な統計分析を行ったりする場合は、Python(パイソン)やR言語などのプログラミング言語や、統計解析ソフトなどを分析ツールとして利用できます。
回帰分析やクラスター分析のほか、データ処理を自動化したり、過去のデータから売上や需要を予測するモデルを作成したりすることもできます。表計算ソフトでは対応しにくい規模や内容のデータを分析する場合に適していますが、統計やプログラミングに関する知識が必要になることもあります。
AIを活用したデータ分析ツール
生成AIなどを活用すると、データの整理や集計、グラフの作成、傾向の抽出などを支援してもらうことができます。データについて自然な言葉で質問したり、分析に必要な関数やコードを作成したり、分析結果を要約したりするような使い方も可能です。
Shopifyでも、AIコマースアシスタントのSidekickを使って、ストアの売上や注文などのデータについて尋ねることで、分析を支援してもらえます。
AIが示す分析結果が常に正しいとは限らないため、使用したデータや分析条件を確認し、結果を検証したうえで活用しましょう。顧客情報などを扱う場合は、利用するサービスのデータ管理やプライバシーに関するルールを確認することも重要です。
まとめ
データ分析を活用して売上や顧客の行動などを客観的に把握することにより、事業の課題発見や意思決定、マーケティング施策の改善に役立てることができます。
分析を始める際は、まず目的を明確にし、必要なデータを収集して整理したうえで、目的に合った手法を選ぶことが重要です。Excelなどの表計算ソフトをはじめ、GA4やデータ可視化ツール、AIなど、利用できるツールも用途に応じて使い分けましょう。
Shopifyでは、ストア分析を利用して売上や注文、顧客などのデータを確認できます。ストアの状況を継続的に分析し、得られた結果を次の施策に活かしていきましょう。
データ分析に関するよくある質問
データ分析に専門知識は必要?
基本的なデータ分析であれば、必ずしも高度な専門知識は必要ありません。Shopifyのストア分析や、表計算ソフトなどを使って、売上の推移や商品別の販売数、顧客の傾向などを確認することから始められます。
より高度な分析を行う場合は、統計やプログラミングの知識が必要になることがあるため、必要に応じて分析手法やツールを広げていくとよいでしょう。
AIを使ってデータ分析はできる?
AIを使うと、データの整理や集計、グラフ作成、傾向の抽出、分析結果の要約などを行えるほか、自然な言葉での質問にも対応できます。
ただし、顧客の氏名や連絡先、購入履歴などの個人情報や、社外秘の情報を外部のAIサービスに安易に入力しないことが重要です。利用するサービスのデータの保存方法や学習への利用の有無、アクセス権限などを確認し、自社のセキュリティルールに従って利用しましょう。
データドリブンな意思決定とは?
データドリブンな意思決定(DDDM)とは、経験や勘だけに頼るのではなく、データを根拠として判断することです。
たとえば、売上データや顧客の購買傾向、広告の成果などを分析し、その結果をもとに仕入れ量や販促施策、予算配分などを決めます。データを継続的に確認することで、施策の効果を検証しながら判断を改善していくこともできます。




